山脇学園中学校・高等学校 YAMAWAKI GAKUEN JUNIOR & SENIOR HIGH SCHOOL

山脇の“いま”を伝える学園ブログ

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2022年度 山脇学園高等学校卒業式 ~その1~

学園便り

3月7日(火)、山脇学園高等学校第75回卒業式を挙行しました。

3年ぶりに保護者の方もご臨席され、253名の卒業をそばで見守ってくださいました。
保護者の方と教職員の拍手に迎えられた卒業生が入場し、開式しました。
担任が卒業生一人ひとりの名前を呼び、代表者が卒業証書を受領、学校長より式辞が述べられました。
今回はその式辞をご紹介します。

 

学校長式辞

温かな春の日差しが、みなさんの旅立ちを祝福しているかのようです。

この佳き日に、ご来賓・保護者の皆様方にご臨席を賜り、山脇学園高等学校第75回卒業式を挙行できますことは、私ども教職員にとって大きな喜びでございます。

卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。

ただいまお名前を読み上げた253名のお一人お一人のお顔を見ながら、6年前、まだ幼さの残る少女だった皆さんが、美しく凛とした、素敵な女性として成長された姿に、胸が熱くなる思いです。

この6年間のみなさんの様々なシーンを振り返ると、いつも人を喜ばせること、想いを伝えることを大切にしていた姿が思い浮かびます。中学時代、下級生と交流する企画を自主的に立ち上げ、どうやって中1生を楽しませようかと一生懸命だった姿。様々な行事では生き生きとリーダーシップを発揮していた係の生徒たち、またそれを実に温かくフォロワーシップで包んでいた生徒たちの姿。人が楽しんでくれることを自分たちも楽しむ、そんな空気がいつも皆さんの周りにはありました。中3の合唱祭は、準備から本番まで中学生活の集大成としての取り組みを見せ、どのクラスも素晴らしいハーモニーを聴かせてくれました。そのわずか10日ほど後に感染症の拡大による休校、その後の長いコロナ禍での生活が始まったことを考えると、あの合唱祭は奇跡の合唱祭だった、と今も思います。

その後みなさんは高校生活のほとんどを、社会の状況に翻弄される日々を送りました。思い描いていたことができない悔しさやもどかしさを感じたことも、さぞあったことと思います。しかし皆さんは、決して悲観することなく、不自由を受け容れ、できることを精一杯やろうとしていました。先生たちにサプライズのビデオを制作している様子、留学生を迎えるための心のこもった歓迎会や交流の様子などは、誰かの笑顔をつくりだすことをワクワク楽しむ、変わらないみなさんの姿でした。様々な制限の中での、山脇生による山脇生だけの、唯一無二の温かい山脇祭も忘れることができません。

高3の体育祭では、6学年一緒に行う伝統の体育祭を3年ぶりに復活させてくれました。どの学年の競技やダンスにも温かい拍手と声援を送り続ける皆さんの姿は、全校生徒がともに全力で楽しむ山脇の行事のありかたを後輩たちに示し、残してくれました。「私たちの姿を見てもらい、後輩たちに引き継ぎたい」と語っていた「ペルシャの市場」は魂のこもった、胸打たれるダンスでした。どんな状況でも希望と明るさを失わず、今できることに感謝の気持ちを忘れず、現実をしなやかに受け止めながら、山脇学園の伝統をしっかりとつないでくれたみなさんに、私は心から「ありがとう」と申し上げたいと思います。

コロナ禍を通して、みなさんの学びの風景も大きく変わりました。iPadにより、授業のスタイルは多彩になり、これまでにない学び方や学び合いができるようになりました。私の教員人生でも過去にない程のスピードで教育の変革が進んでいきました。教員にとっても怒涛の日々でしたが、皆さんは動じるどころかiPadをあっという間に使いこなし、自分の学び方・使い方を習得していきました。その柔軟さに私たちも力づけられながら、新たな学びの扉を皆さんとともに開いていくことができました。

このように、数年前までは想像すらしていなかったような生活の変化は、これからはもっと早いサイクルで起こっていくのでしょう。皆さんがこれから生きていく時代は、科学や技術の発達がさらに人々の暮らしを豊かに便利にしていくことは間違いありません。一方で私たちは、テクノロジーの進歩だけでは解決できない、地球規模での複雑な社会課題を知っています。世界中の人々の命を脅かしたコロナをようやく克服しようとしている私たちが、人々の生活を根こそぎ破壊し、多くの命を奪う戦争を止めることができない現実も目の当たりにしています。私たちはこのような現実を先送りせず、自分事として認識しなければなりません。発達するテクノロジーをどのように人間性と結びつけ、「自分も人もWell-beingに生きられる持続可能な社会」へ役立てていくのか真摯に考え続け、行動しなければなりません。

そんな皆さんに、山脇房子先生の著書『黄金の釘を打て』から、序文にある、次の言葉を贈りたいと思います。

この「社会」というものは、劫初より人類が造り営んできた大きな「殿堂」でありますが、私共はいま、この殿堂の造営を受け継いでいるものであります。(中略)皆さま。後から来る者の幸を願う私共は、常に自らを正しく磨き育てて、この殿堂に黄金の釘を打たねばなりませぬ。私共めいめいが常に自らを美しく磨き育てるということ―それはとりもなおさず、この「社会」とよぶ人類の「殿堂」に黄金の釘を打つことであります。

私はこの言葉に出会ったとき、感動を抑えることができませんでした。「自分を磨き続けなさい。そして揺らぐことのない殿堂を支える1本の釘となりなさい。」と房子先生は、時代を越えて、山脇生の使命と、「志」の真の意味を伝えてくれているのだと。そして私も考えました。自分の何を活かし、何を果たすことが、次世代の社会へ意味のある一釘を打ち込めるのだろうかと。みなさんとともに、人生のテーマとして考え続けていきたい、と思っています。

私は、体育祭でみなさんが描いた「翔」の字を見て、大きな「志」を胸に、一人ひとりが大空を伸びやかに飛翔していくイメージを描きました。そしてそれができる強い羽根をみなさんはもう持っていると思います。

みなさんはこの6年間この学び舎で、学ぶことの意味を知り、学び方を知り、自走する力を身につけました。情報や感情に流されず、人のせいにせず、自分の頭で考え、自分の責任で行動することを学びました。異なる価値観のなかで、様々な意見に耳を傾け、根拠をもって考えを発信する経験を積みました。さまざまな意見をすり合わせ、最適解を求め、みなで成果を創りあげた喜びを味わいました。大学受験では、目標に向かって一心不乱に取り組むこと、壁にぶつかっても果敢に挑むこと、そしてその結果を受け止め、意味につなげる強さを学びました。応援し、祈ってくれる存在の温かさ、当たり前にそばにいてくれる存在のありがたさに気づきました。これからの人生で、時に強い雨風に煽られたとしても、山脇での日々に答えを探し、「自分の正解」を目指して飛び続けられると信じています。

今日、先生たちは、あなた方と過ごした日々に思いを馳せています。関わった時期や場面は違えども、皆さんのかけがえのない青春時代の1ページに存在し、成長の場に立ち会えたことを幸せに思っています。そして思い出しています。時に教え諭し、時に隣を歩き、時に一緒に笑い涙した日々、皆さんの成長に伴って、少し後ろに下がり、迷ったときには声をかけ、時に背中を押した日々…。

でも、私たちと歩く道のりは今日ここまでです。一人で、自分の羽根で大空へ飛び立つあなた方の後姿を、先生たちはここで見送ります。大丈夫。あなたがここで培ってきた「志」という北極星を道しるべに行けばよいのです。

皆さんにはもう一つ、道しるべがありますね。今日も胸に輝く校章です。これからも心の中につけ続けてください。「まるく優しい心のなかに、いつも凛と品格を持って立つ富士の姿」は、どんなときも山脇生の生き方を照らし、あるべき姿を指し示してくれます。

最後に保護者の皆様に、お嬢様の晴れの日にあたり学校を代表して、心よりお祝いとお喜びを申し上げます。6年前、真新しく少し大きめのワンピース姿で入学されたお嬢様を、毎朝心配しながら送り出されたことでしょう。そしていま、同じ制服を、こんなにも美しく着こなしている姿をご覧になり、さぞまぶしく、感慨もひとしおのことと思います。

私ども教職員一同、大切なお嬢様をお預かりし、全力を尽くしてまいりました。中高時代という思春期にあたり、お嬢様のご成長の日々には、さまざまな表情があったことと思います。コロナ禍においては、時に不安や孤独を抱えるお嬢様を、励まし支えてくださっていたことと存じます。どのような時も、学園をご信頼いただき、多大なるご理解とご協力を賜りましたこと、6年間のお嬢様の健やかな成長を見守り、ご支援をいただきましたことに心より感謝申し上げます。

お嬢様がこれからも志に向かって力強く歩みを進め、心豊かで幸せな人生を送られますことを、保護者の皆様と共に、私どもも精一杯応援し続けてまいります。

それでは卒業生のみなさん、どうぞお元気で。

お一人お一人の前途に幸多かれと心から祈り、式辞といたします。

令和5年3月7日
山脇学園高等学校校長 西川史子