12/26-27 九州大学芸術工学部で学びのプログラムに参加しました
山脇の学び
12月26日・27日、九州大学芸術工学部にて、芝高校の芝漬ゼミ「音響空間を科学する〜音響設計の意義と方法を知る」が実施され、芝高校・麻布高校の生徒とともに、山脇学園の高校1年生が参加しました。
九州大学芸術工学部は、1968年に日本で初めて芸術工学(デザイン)の研究教育を行う研究機関として設立された九州芸術工科大学を源流に持ち、現在もこの分野をリードする拠点です。
なかでも音響設計の分野では、音の性質を科学的に捉えながら空間の響きや聞こえ方を設計する学びが行われており、サウンドエンジニアとしてグラミー賞を3回受賞した八木禎治さんをはじめ、第一線で活躍する人材を輩出しています。
今回のゼミでは、音響設計コースの先生方とTAの学生の方々にご協力をいただき、講義・実験・施設見学を通して、大学での学びを体験する2日間となりました。
【1日目】
1日目の最初は、尾本章先生による講義「音と聴覚の入門」を受講しました。音の性質や音波、周波数と音の高さ、音の大きさの表し方、耳の仕組みなどについて、高校物理の内容も参照しながら、音を科学的に捉え、デザインするための基礎となる考え方を学びました。
続いて、鮫島俊哉先生による講義を受講しました。ここでは、さまざまな楽器の音がどのような仕組みで生まれているのかについて、物理モデルを用いて探る研究について学びました。実際の楽器の音と、モデルを用いて作られた音を聞き比べることで、「楽器らしさ」を決めている要素について考える機会となりました。
講義の後には、ヴァイオリンの弦の振動をストロボで可視化する実験や、打楽器に振動を与え、音の高さによって粒子が集まって模様が現れる現象を観察する実験などを体験しました。講義で学んだ内容を、実際の現象として確認する時間となりました。
【2日目】
2日目の午前は、尾本先生による室内音響学・建築音響学に関する講義が行われました。コンサートホールや講堂などの空間において、音がどのように広がり、反射し、残っていくのかを理論的に捉えながら、「聞こえ」を整えるための基本的な考え方について学びました。目的に応じて音の反射や残響をコントロールし、音響材料を使い分けることで、空間に適した音環境が設計されていることを、具体例を交えて分かりやすく説明していただきました。
講義の後は、無響室や残響室、録音スタジオなど、音の研究や教育に用いられる専門的な施設を見学しました。まったく響きのない無響室や、強い残響をもつ残響室に身を置くことで、環境によって音の聞こえ方が大きく変わることを体感しました。
また、さまざまな場所の響きを測定し、別の空間で再現する「音場再生」の技術についても紹介していただきました。実験室にいながら、まるで実際にコンサートホールの中で演奏しているかのような臨場感のある響きを体験し、音響設計によって空間の体験そのものを再現できることに、多くの生徒が強い驚きを感じていました。
午後は、山内勝也先生のご指導のもと、聴能形成に関するトレーニングを体験しました。音の高さや大きさの違いを聞き分ける練習などを通して、音を扱うための基礎となる「聞く力」の重要性を学びました。
プログラム終了後も、生徒たちは実験室を改めて見学したり、先生方や学生の方々に質問をしたりする様子が見られました。2日間を通して、音や音空間を科学的に捉え、設計するという大学での学びを具体的にイメージする機会となりました。
生徒たちに貴重な学びの場をご準備していただきました九州大学芸術工学部の先生方、学びの機会を提供してくださった芝高校の先生方、その他本プログラムの実現にご尽力いただいた皆様に、心より感謝申し上げます。