山脇学園中学校・高等学校 YAMAWAKI GAKUEN JUNIOR & SENIOR HIGH SCHOOL

山脇の“いま”を伝える学園ブログ

POLARIS

2024年度1学期終業式を行いました

学園便り

7月20日(土)、1学期終業式を行いました。

講堂にて、中学校・高等学校の順で実施しました。

今回は中学校の学校長式辞を紹介します。

【学校長式辞】

2024年度1学期終業式式辞                    

 

おはようございます。梅雨も明け、まさに夏本番の日差しですね!

期末考査が終わってから今日まで、いかがお過ごしでしたか。

今年からこの期間を「探究日」という表現にしました。昨年までは「家庭学習日」と言っていたのですが、「探究日」と改めた理由があります。ゆっくりとまとまった時間が持てるこの期間こそ、自分の志の種を育てるフィールドを開拓したり、自分の探究テーマを探したりする時間にしてほしい、と考えたからです。

この「探究日」の期間には、学園として、また学年として、様々な探究の催しを企画し、開催しています。この10日ほどでも、中学生が参加できたものとしては、JICAの講演会、ドラマエデュケーション、芸術鑑賞会、起業ワークショップ、東大医科学研究所や東大生産技術研究所の講演会、東京農大イベントなどなど。全員参加のものもあれば、学年問わずだれでも参加できるものもあり、覗いてみるとどれも多くの生徒が登校して参加していました。私も全部とはいきませんでしたが、様々な講座を聴講させていただきました。保護者が参加していらっしゃるお姿も随分見かけました。

この年になって、皆さんと一緒に、これまで接することがなかった学問の世界に接することができるのは本当に楽しいことです。その方の研究の蓄積を、対面でお話しいただける。難しく複雑な学びの世界も、中高生に伝わる言葉でかみ砕いて一生懸命伝えてくださる。広く深い学問の世界の一端を覗くに過ぎない限られた時間でも、スゴイ世界の入り口に立つきっかけを頂ける。自分が中高生でこんな世界を知っていたら、人生が変わっていたのではないかと思い、皆さんが羨ましく思えることもしばしばです。

参加している山脇生たちは、先生方の情熱を目と心でガッツリ受け止めているのが、後ろからでも伝わってきます。素晴らしいプレゼンは、オーディエンスもともに創り上げるもの。山脇生はいつも温かくその場を創っていると感じます。講演後の質疑応答では、何人もの生徒が手を挙げてのびのびと質問しています。どんなにすごい人の話も、全部「なるほど」と受け入れるのではなく「え?どうして?」「こうじゃないのかなあ」と思っていいし、礼節さえあればどんな意見も疑問も伝えてよいのです。誰かが意見や疑問を言ってくれたことで、また新たな疑問が引き出され、場の理解が深まる、そんな場面にも出会いました。やりとりのあとは、皆が拍手を送る。その光景もとても素敵でした。

そんなみなさんの学びのステージがさらに広がっています。昨日お知らせしたとおり、新たに法政大学と高大連携協定を結びました。15学部を擁する法政大学の学際的な学びに触れたり、SDGsパートナーズなど大学が主催する各種プログラムに参加したりすることができます。

このような大学との豊かな連携や「探究日」での様々なイベントの企画は、みなさん一人ひとりの志の種を育てるための先生たちからの贈り物です。ぜひ主体的に参加し、ご自身の中にある「好きなこと」「やりたいこと」を開拓してほしいと思います。

さて、みなさんには「一流」になってほしいと伝えてきました。私がみなさんに期待する一流とは、将来何をするにしてもどんな仕事に就くとしても、「プライドを持って真摯に打ち込んでいる人」「プロフェッショナルで質の高い仕事をする人」を追求する人です。この夏は、パリオリンピックのアスリートたちの姿から、一流とは何かを学ぶことができます。どれだけの時間を積み重ね、どれだけの壁を越え、心身を鍛錬して世界のステージに上がるのか、そして本番の一瞬にどのように集中し自分の力を最大限に発揮するのか。すべての選手たちに、語り尽くせないドラマがあるはずで、私は金メダルよりもそこまでのプロセスや人間性にこそ、一流かどうかが表れるのではないかと考えています。

 今日はそのようなアスリートの中で、一人の選手を紹介したいと思います。その方は富田宇宙さんといいます。オリンピックに引き続き行われる、パラリンピックの選手です。富田選手と出会ったのは20日ほど前のことです。「ごきげんの価値」をテーマにした対談に出演されており、直にお話を聞く機会に恵まれ、私にとって忘れられない時間となりました。

富田宇宙選手は、その名の通り宇宙飛行士になることを夢見て勉強に励んでいた高校生16歳の時に、失明に至る難病「網膜色素変異症」が発覚しました。それから徐々に視力を失っていくこととなります。今まで当たり前に見えていた世界が、少しずつ少しずつ見えなくなっていく。見える範囲がサッカーボールくらいとなり、ソフトボールくらいとなり、卓球ボールくらいになっていく。そしていつか全く見えなくなる日を待つ恐怖。できていたことができなくなっていく絶望感。想像できるでしょうか。徐々に視力を失いながら、富田選手はスポーツも仕事もそれまでと同様に健常者の中で成果を出そうと努力を続けます。しかしできなくなっていくことが増える中、幾度も挫折を味わいます。一時は部屋に引きこもり、苦悶した時期もあったといいます。

そのような中で彼は「障害を乗り越える」のではなく「強み(濃厚な特徴)」としてとらえる生き方をしたいと考えるようになりました。障害者理解が遅れている日本でパラリンピック東京大会に貢献しようと、パラ水泳を開始しました。強化選手に選出されると、会社を退職し、パラアスリートとして競技に専念するほか、多様性理解や共生社会の実現を推進する活動を始めました。体育大学の大学院へ進学し、パラスポーツの専門的な知識を習得するとともに、記録を更新し続け、2021年の東京パラリンピック大会に出場、3つのメダルを獲得します。その後一人でスペインに渡り、バルセロナの障害水泳チームで活動する傍ら、日本のコミュニケーションやマインドセットを研究し、よりよいパフォーマンスを発揮するためのライフスキルの重要性を伝える活動に携わります。その他各方面での活躍やチャレンジを続けながら、今年、パリでのパラリンピックでメダル獲得を目指しトレーニングを続けていらっしゃいます。

私の目の前にいらした富田選手は、潜り抜けてきた悩みや苦しみを全く感じさせない、快活で明るく、爽やかな笑顔でした。「今困っていることはありますか?」という質問に、しばらく考えたのち「特にないですね」と笑っていました。印象に残っていることばがあります。

「結果にとらわれないこと。どういう気持ちで臨んだのかをいつも大事にしている。きげんよくいることはとても大切」

「自分らしさを知ることが大事。他の誰かと比べて“こうでなきゃ”と思うとうまくいかない」

このことばについて、自身のHPに掲載されている文章を、皆さんに紹介します。いま壁にぶち当たっていると感じている人に、贈りたいことばです。

「障害者であるパラアスリートには、少なからず“できない”ことがあります。以前の私は、数字や結果ばかりに重きを置き、できる他人とできない自分を比べて追い込んでいました。でもそれでは苦しいままで、いつも心が疲れていました。それがパラスポーツに出会って、それぞれの成長にフォーカスし、それぞれの目標に向かっていくことこそが人生の質を向上させ、能力を引き出すために必要であると学んだのです。」

「すべての人が最大限の力を発揮するには、相対的な結果を評価するよりも、自分らしく成長できたかが重要である、これは、すべての人に欠かせない思考法であり、非認知教育として重要視されている考え方と重なります」

「私は“どうするか”より“どう在るか”が重要です。いつでもだれに対しても、想像力と余裕をもって笑顔で優しく接することができる自分でありたい。そのようなしなやかな心理状態、常に自然体で、ベストパフォーマンスでいられるに自分にたどり着きました。あらゆる人とこのスキルを共有していきたいという思いが強くなっています」

帰り間際、見送ってくださった富田選手と交わした握手の、手の温かさと柔かさが印象的でした。

「パラリンピック頑張ってください」「終わったら、うちの生徒たちに話をしていただけないでしょうか」とお願いすると「もちろんです!喜んで」と答えてくださいました。

 

「今ここに在る幸せ」に気づいて生きることの大切さを、皆さんにお伝えしたいと思います。

今日は1学期の振り返りをする日です。人と比べるのでなく自分の成長にフォーカスし、ありたい自分に向かって新たな目標を定め、そこに向かう夏休みにしてください。

全員が元気で、実り多き夏になりますよう願っています。

 終業式後、山脇有尾類研究所理事長を務めていただいている篠崎尚史先生をお招きし、高校生対象講演会が行われました。夏休みに向けて「点と点を結ぶ」という題目で、ひとつひとつの「点=経験」を強いものとし、それを面にしてつなげていくことの大切さをお話ししていただきました。

篠崎先生の多様な経験やパワフルなエネルギーを受け取り、深い学びとなったことでしょう!

終業式の前後にはHRがあり、担任の先生から1学期の成績表を受け取ります。

HRと講演会のあとは大掃除を行いました。1学期の汚れを落とし整理整頓をして、1学期を締めくくり、夏休みを迎えます。

日に日に暑さが増し、当日の最高気温は35.8℃と猛暑日となっていました。

酷暑に負けず、夏休み明けには元気な姿を見られることを楽しみにしています。