5/6(金)全校朝礼を行いました
学園便り
今年度より一部時程を見直し、朝のHRの時間を長くしました。
担任とクラスの生徒が顔を合わせてやりとりする毎朝の大切な時間です。読書や振り返り、課題にも取り組みます。
また、月1回はこの時間に全校朝礼を行います。5月6日(金)の全校朝礼では、学校長より次週実施予定の校外学習に向けてお話ししました。その内容を、ご紹介します。
*********************************
おはようございます。
飛び石のゴールデンウィークではありますが、新年度のスタートの疲れを少し癒すことができていますか。
さて、来週は各学年が様々なところへ出かけ、学んだりチャレンジしたりする週となります。
山脇では校外学習のそれぞれにテーマを持たせ、6年間の中に意味をもって位置づけています。宿泊を伴う旅もあれば、日帰りの小さな旅もありますが、どれも、いつもと異なる場所に身を置き、皆で学び合う大切な機会と考えています。
今日は「旅」についてお話します。アメリカの哲学者エマーソンはこんな言葉を残しています。
「美しいものを見つけるために私たちは世界中を旅するが、自らも美しいものを携えていかねば、それは見つからないだろう」この意味を考えるにあたって、今日は私の考える「旅の持ち物」を3つお話します。
1つ目は「自分のカメラ」です。
今からカメラを購入してください、ということではありません。あなたのファインダーで、見たもの、聴いたもの、感じたものを自分の目と心でとらえ、シャッターを切ってください、ということです。そこには「今の自分」にしか切り取れない、写せないものがあるからです。特に、柔らかな感性を持つ中学高校時代に写しとったものは、その後の自分の中にずっと残り続けます。
私の忘れられない一枚は、中3の修学旅行の時に見た奈良興福寺の「阿修羅像」です。像の前に立った時、あの哀しみとも喜びとも怒りともつかない表情に見入ってしまい、なぜかその場を動くことができませんでした。そのあと阿修羅像とは何度も会っているのですが、あの時の鮮烈な印象は今も覚えているのです。
また高2の時、修学旅行で訪れた原爆資料館。写真や陳列されている資料の一つ一つに衝撃を受けましたが、中でも被爆者の方が書き残された詩の前に打ちのめされ立ち尽くしました。その時に抑えようもなく沸き上がった感情は、月日が経っても忘れることはありません。
旅の中では、言葉にできない、けれど心が動く瞬間がきっといくつもあるはずです。それは隣にいる友達と同じでなくてよいのです。自分だけの映像を逃さずに心のシャッターを切ることを大切にしてください。それは心に焼き付いて、何年経ってもその旅と共に思い出すシーンになります。
旅に携えて欲しいもの2つ目は「リボン」です。
旅先の土地では、自然があり、人々の暮らしがあり、歴史や文化があります。そしていまそこにあるものには、そうなった理由があります。個人の旅行ではガイドブックなどで、修学旅行では事前の学習でそれらを学んでから出かけていくわけですが、実際に目の当たりにしたそのときに、単なる知識だったものが自分の中で繋がり、心に落ちる瞬間を味わいます。
5年ほど前、高2の沖縄の修学旅行の引率で、バスで一面に広がるさとうきび畑を通りかかったときのことです。バスガイドさんが第二次世界大戦の沖縄戦の話をされ、そのあと「島唄」を歌ってくださいました。さとうきびのことを沖縄のことばでは「ウージ」といいます。「ウージの森であなたと出会いウージの下で千代にさよなら」という歌詞に、80年前のさとうきび畑で起こった光景が脳裏に浮かび、涙がとまらなくなりました。授業で何度も歌ってきた曲でしたが、目に映る情景と共にその祈りの意味が自分の中に落ちた瞬間でした。
平和学習は山脇の修学旅行の大きなテーマの一つです。私たちは、何年に誰が何をした、どこで何が起こったか、ということは知識として知っています。しかし、それだけでは真に平和を考える出発点にはならないことを、その場所でそこにいた人々が経験した現実が、私たちに突き付けてくるのです。戦争は過去のものではなく、今、同じ空の下で起きています。このことを深くとらえ、学び、考える時間にしてきてください。
また旅では、豊かな自然に触れ、その美しさと神秘さに打たれることもあれば、人々が築いてきた歴史や文化の偉大さや奥行きに感じ入ることもあることでしょう。山脇での旅をきっかけに自分の志を見出した先輩もいます。
リボンを一巻き、心に携えていってください。その場所で見るもの感じるものすべてを、これまで学んできたさまざまな知識とあなたの中で結び合わせるためのリボンです。そしてそれらを、未来の自分や未来の人々へ渡す贈り物として結ぶためのリボンです。
旅に携えてほしい3つ目は「礼節の心」です。
始業式にも申し上げた通り、「礼節」とは心の伴った礼儀のことであり、相手を大切に思う振舞いのことです。お世話をして下さる方々、話をして下さる方々、安全に私たちを目的地へ運んでくださる方々…出会う人々への感謝を持ち、是非その場で、挨拶や言動として表現し伝えてください。それは、旅先であなた方がその場所その場所に残し、置いてくることのできる贈り物です。
今の社会状況をふまえ、自分を守るための感染予防だけでなく、周りの人々を守ることを意識した一人ひとりの行動も求められます。現高3生の3月の修学旅行では、各地で、節度ある振舞いが素晴らしかったとの言葉を頂いたと聴いています。山脇生としての自覚と礼節ある行動を、大変うれしく思いました。
以上、「自分のカメラ」と「リボン」と「礼節の心」の3つを携え、友だちとともに大いに学び大いに楽しみ、想い出をたくさんつくってきてください。元気で笑顔で帰ってくる皆さんの姿を見ることが保護者の方も、先生方にとっても何よりうれしいことです。みなさんの旅が素敵なものになりますよう心から願っています。
では、今日もよい一日を。
【全校朝礼】
【朝読書】
【先生からのお話】
【朝学習】