山脇学園中学校・高等学校 YAMAWAKI GAKUEN JUNIOR & SENIOR HIGH SCHOOL

山脇の“いま”を伝える学園ブログ

POLARIS

中学3年 オキナワインターナショナルスクールで国際バカロレアの授業を体験

グローバル

12月17日より6日間にわたり、中学3年(希望者)ではオキナワインターナショナルスクールでのウインタープログラムに参加しました。オキナワインターナショナルスクールは国際バカロレア(IB)認定校であるため、現地校でのIBの授業を体験することを目的としたプログラムとなります。
Technological Innovationを今回の探究テーマ(Statement of Inquiry)とし、それを基に山脇学園のために1週間の特別プログラムを組んで頂きました。生徒たちは1限から順に、英語、数学、individual &society、デザイン、知の理論(TOK)という時間割で過ごしました。また、自分たちが学習したものや気付きを踏まえてプレゼンテーションを行い、それぞれの生徒達が1週間の取り組みをルーブリックに沿って評価してもらうという流れで行いました。

全ての授業を英語で行うため、初日は慣れない環境に苦労をしていましたが、次の日には早くも授業に慣れ、「昨日よりも授業が分かるようになった!」という生徒たちがほとんどでした。日本人同士でのディスカッションでは、つい日本語を使ってしまいがちですが、今回は『できる限り日本語を使わないように・・・』ではなく『日本語使用禁止』でスタートしたため、中には思ったことを伝えるのに普段の何倍も時間がかかって苦労している生徒たちもいました。また、探究テーマを1つの軸に授業が展開されていくため、それぞれの授業で学んだ知識が全て1つの実社会の問題(今回は主にAI)に集約されていくことを実感できたのではないかと思います。

<生徒たちの感想>

・問いに対して自分の意見を持った時に、論理的根拠があるかどうかを考えられるようになった。周りの様子を見ながら協力して物事に取り組む意識が増えた。

・私は今回のプログラムで英語を話せることは沢山の人とコミュニケーションを取れる、様々な視点で物事を見られる練習になることを知った。そして、以前より英語を楽しいと思うようになった。もっと色々なものに挑戦し、自分の武器を増やし海外に飛び立てるような人になりたい。

・それぞれの授業で、ただ内容を理解したり覚えたりするだけではなく、それぞれを繋げてWorld Connect、IB Connectに考えられるようになった。

・最初は授業が全く分からなかったが、2日目からはどんどん先生の言っていることが分かったり、自然と英語を話すことができるようになったりした。また、授業の体感が15分くらいに感じてすぐに1日が終わるようになった。

・心の変化ですが、今までの「頑張った」のレベルは低かったのだと思うことができた。

・日本語などでも文構成を感が話す力がついた。

・最初はできなかった質問やディスカッションが簡単な英語ならできるようになった。自分だけでなく相手(先生や友達)の言っていることを理解できるように努力出来たと思う。

・色々な教科の中の繋がりを意識できるようになった。

・少し自分の意見に自信が持てるようになった。今まで正解を求めすぎていた感じがあったけれど、それが薄れていっている気がした。枠にはまらない自分の可能性を自分で決めない人になりたい。

<具体的なプログラムの内容と体験>

1日目

那覇空港到着後にアメリカンビレッジへ向かいました。

この日は最近の沖縄では珍しく肌寒い気候でしたが、クリスマス用にデコレーションされたアメリカンビレッジの中で、それぞれが昼食を取った後に、買い物をしたり、海の近くで記念写真を撮ったりと楽しく過ごしていました。その後、ホテルにチェックインをして、夕飯を食べた後は、翌日に備えてゆっくりと過ごすことができました。

2日目

OISにて国際バカロレア(IB)カリキュラムに沿った授業が始まりました。ホテルより30分ほどでオキナワインターナショナルスクールへ到着し、上履きに履き替え、教室へと入りました。昼休みには構内の見学ツアーも行いました。

初日は、英語での難しい授業内容についていくのが精一杯の様子でしたが、それでも必死で理解をしようとする姿は本当に素晴らしく、このプログラムをきっと全力でやりきってくれるだろうという期待も生まれました。

1日の授業終了後に、(当初予定されていなかったのですが)建設中の首里城への見学をすることができました(首里城はホテルより徒歩10分のところにあります)。急遽のイベントでしたが、生徒達も大喜びをしており、冬の澄み切った空と沖縄の街並みを首里城より一望できたことと、案内人の琉球王国の歴史と共に見学をした(実際に仕事中の)作業場を見ることができたことで、生徒達もリフレッシュできたと感じています。

3日目

2日目と同じように、朝食の後元気で学校へバスで向かいました。

生徒達に昨日の夕食後の様子を聞くと、「ずっと勉強していました!」という声が多く、また初日の感想は「言いたいことがあったけど、言えなかった。明日は絶対に喋れるように頑張る」という声が非常に多かったです。その期待の通り、たった1日でこんなに変わるのかと思う程、昨日とは全く違った雰囲気になりました。多くの生徒が自分から発言をしようと挑戦する姿を見ることができました。

数学の授業では、ピラミッド上になった箱の中に規則的な数字が並んでいるワークシートが配られ、生徒は自分の好きな数字の法則性(倍数など)を選び、該当する数字を好きな色で塗りつぶしていく活動を行いました。プログラミングのコーディング(意味付け)のイメージを膨らませる練習です。活動後、チームごとの成果物をホワイトボードに貼り出して、見比べてみると、どのチームも異なる塗りつぶしパターンになったことがわかりました。次に、他のチームの成果物を見て、どんな数字の法則性でパターンを作っていったのかを分析(コーディング)しました。数学というと、答えありきの公式を学んで、反復練習して計算の精度を上げていくというイメージがありますが、IBの数学では、異なる事象に対して、どう意味付けするか、なぜそのパターンになるのかを考えさせ、言語化することを重視します。数学の評価軸が「コミュニケーションスキル」になっていることもこれを物語ります。生徒は四苦八苦しながらも、自ら発見したコーディングのパターンを英語で互いに説明し合っていました。まさに、脳に汗をかく授業。

放課後、サンシン・方言教室を行いました。生徒は熱心に三線を練習して、最後には全員で一曲弾けるようになりました。サンシン以外にも様々な沖縄の伝統楽器を紹介してもらったり、実際に触らせてもらうことができました。後半は様々な方言を学びました。めんそーれ!(ようこそ)に対して、はいさい!(こんにちは)は男性、はいたい!(こんにちは)は女性が言う言葉など。最後には、講師の先生が、沖縄の伝統の歌を数曲披露してくれて、生徒たちは手拍子をしたり、カチャーシャーの振り付けで踊ったりと楽しい一時を過ごしました。

4日目・5日目

デザインの授業では「学校はAIとどう向き合うべきか」というテーマをもとに、マシーンラーニング(機械学習)について学ぶ授業でした。生徒は、AIに機械学習させるための2種類(例:笑った顔、怒った顔)の素材(写真)をパソコンで数十枚撮影し、それを専用のAI機械学習サイトにアップロードします。その後、カメラに映る人の顔が、笑っている顔か、怒っている顔かを、AIがリアルタイムで判定し、その精度を確認します。生徒は、この活動を通して、AIがデータベース(画像、動画、音声、文字)の蓄積から、いかに人と同じように、物事をどう認知をしていくかを学びました。普段の授業ではなかなかできない学び。とても刺激を受けたようです。

TOKの授業でも「学校はAIとどう向き合うべきか」というテーマをもとに、AIがビジネス、文化、生活に与える影響を様々な角度で学び、意見交換を行います。「AIのフェイク情報に人が騙されたり、価値観が左右されたりすることはよくない」という意見や「AIが今後発達しすぎることの恐れ(シンギュラリティ)」を提唱する科学者の意見を集約し、「なぜ人は知らないこと恐れるのか」という根源的な問いを先生が生徒に投げかけ、考えさせます。このような哲学・倫理に近い問いに対して、日本語で意見を述べることも難しいと感じる中で、生徒たちは一生懸命考えて、自分の言葉でチームや先生に英語で述べました。リフレクションシートを読むと、TOKは、5つの教科の中で1番難しい、という意見が多かったのですが、これを学ぶことが国際バカロレアを体験するプログラムの真骨頂の1つ。貴重な体験になったのではないかと思います。

6日目(最終日)

前日からプレゼンテーション準備を行い、最終日に発表を行いました。

国際バカロレアの教育は、全ての教科内容に繋がりを持たせ、知識を統合して実社会に役立てることが大きな特徴となっています。

今回は1週間という短期間のプログラムでしたが、その短い中でも、全ての科目がAIについて発表するfinal presentationで融合されることを実感できる、緻密なカリキュラムが組まれていました。全ての授業を通して「学校がAIとどう向き合うべきか」「AIのリスク」「AIが社会に与えるプラス面とマイナス面」など、AIについて多角的に学び、知識を深めるとともに、それぞれの授業から目的にあったスキルを育成していきました。英語では1日目・2日目はリーディング、リスニングに焦点を当て、「AIの脅威」についての理解を深めました。それを元に3日目・4日目は「学校がAIとどう関わるべきか」をライティングで自分の意見をまとめ、それを元にプレゼンの原稿を作成、スピーキングスキルの強化に繋げました。

数学の育成スキルは「コミュニケーションスキル」でした。理解することに苦戦している様子も見られましたが、「どのようにそのコーディングを導いたか」を自分の言葉で説明することで、難解なこともわかりやすく相手に伝えるにはどうしたら良いか、をこの時間を通して学んでいました。

Individual and society ではグループごとに国を割り当てられ、その国とAIとの関係性をポスターにまとめました。インターネットを使えば膨大な情報を手に入れられる中、1枚のポスターにまとめるために必要な情報をグループ内でもdiscussionし、それを通してリサーチスキルを高めていきました。

デザインの授業では主にAIの種類についてアクテビティを通して学び、スライドの作成を行いました。特にdeep learning とmachine learningの違いを実際のソフトを用いて体験し、AIとの正しい向き合い方を学んでいく中で、テクニカルスキルを身につけていきました。

TOKの授業では批判的思考力(critical thinking skills)の育成に焦点を当てていました。日常生活に疑問を持つ、というのは普段の生活の中でもなかなかできないこと。AIとの共存が当たり前になってきている中で、その便利さだけでなく、ネガティブな面を考察することで、どのようにAIと向き合っていくべきか、多角的に見る視点を養えたのではないかと思います。