山脇房子先生ご命日
学園便り
11月19日(土)は、初代校長である山脇房子先生のご命日です。全校朝礼と、墓参を行いました。
放送での全校朝礼では、学校長より房子先生の著書『黄金の釘を打て』の言葉の紹介も交えたお話がありました。また、中高生徒会長より、午後の墓参で房子先生へご報告予定の学園の活動の様子を、在校生に伝えました。
【学校長のお話】
房子先生のご命日にあたって
ここのところ、次年度の 120 周年の準備をするなかで、山脇房子先生の著書や資料にふれ、改めて、房子先生 という一人の女性の生き方や考え方に感動することが多くありました。房子先生の遺された言葉は、強さやしな やかさ、厳しさや優しさ、生きる姿勢や学ぶべき多くのことを、今も私たちに伝えてくれます。今日のご命日、 そして次年度の 120周年に向けて、みなさんと一緒に、その人間性や志に思いを馳せていきたいと思っています。
みなさんが毎日胸につけている校章や、第一制服のワンピースは、房子先生ご自身がデザインされたということはご存知ですね。校章は山脇学園創立 3 年後の 1906 年(明治 39 年)にデザインされました。込められている 意味、描かれている女性像を、みなさんの胸元を見て思い出してください。そのころの生徒の写真を見ると、着 物姿の襟元にハートの徽章が光っており、とてもモダンな感じがします。全国色々調べてみたのですが、ハートの形の校章は、他には見つけることができませんでした。今も皆さんに愛されている、愛らしく、気品のあるこの校章は、他のどこの学校にも似ていない唯一無二のデザインなのです。
さらに房子先生は、まだ和服の女性がほとんどであった明治末期頃から、いち早く着物の改良服に取り組みました。その理由の一つとして、第一次世界大戦後の経済不況において「日本のキモノは毎日女生徒が着るには不 経済で、出費のかさむものであります」と述べています。若くから欧米人と接し、西洋の風習・マナーを身につけていた房子先生は、和装の廃止を決断し、イギリスの女学生の服装を参考にして、1919 年(大正 8 年)、ワン ピースの制服をデザインします。これが日本で洋装の制服第一号となる、今も皆さんが着用している第一制服で す。東京の街でも洋服を着ているのが珍しかった当時のことです。恥ずかしがる生徒もいたそうですが、房子先 生は自ら率先して着用し、この制服に誇りを持たせたそうです。
また房子先生は、この制服を新聞に掲載し、他の女子校との差別化を図り、新しい時代の女子校の姿をアピールします。これが功を奏し、山脇学園高等女学校の名は全国に広まり、人気を博して、翌年は校舎を増築しなければならないほど入学者が増えたのだそうです。
資料で見たセピア色の写真には、常に凛と背筋を伸ばして微笑む房子先生と、それを囲むワンピース姿の誇らしげな生徒たちの姿がありました。100 年を超えて生徒に愛され、多くの先輩たちが大切に着用し続けてきた制 服。今もみなさんが美しく着ている姿を、房子先生は嬉しく見てくださっているのではないでしょうか。
さてこのように時代の先進性に富み、行動力にあふれ、美的センスにも優れた房子先生ですが、多くの著書を 書き遺されています。強くまっすぐなメッセージや、誰もが経験する悩みや迷いに寄り添う言葉の数々は、今 の私たちにも多くのことを語りかけてくれます。房子先生のご命日にあたり、著書『黄金の釘を打て』から、 今日は「寛容・堪忍」という部分を皆さんにご紹介します。
「寛容・堪忍」 腹を立てたことがない人は極めて稀にしかないでしょう。たいていの人がよく腹を立てます。ふだん「正しく優しく我 慢強く生きねばならぬ」と心がけている人であっても、人から失敬なことを言われたり、勝手なことを言われたり、中傷されたりすると、むかっとして腹を立てることがあります。 しかし、多数の、しかもめいめい違った気性を持つ人々と共同生活を営んでいる私どもは、人から侮辱されることも、勝手なことを言われることも、中傷されることもあるはずで、これは誰でも最初から覚悟しておかねばなりません。(中略)
「打たれたら撫でて返せ」ということわざがあります。たとえ打たれてむかっとしたとしても、じっと我慢して相手の 気持ちを和らげるような態度をとれば、その寛容な態度は相手を浄める光となり、それが度重なるにつれて自分は ますます「我慢強い人、腹の太い人」として美しく育っていくことになります。人から何と言われても、自分の良心さえ許せばあまり気にならない人は実に幸福な人です。たとえそれが針先ほどのことであっても、自分の良心が許さぬときが一番つらく苦しいものです。(中略)
私どもは、腹を立てる前に、よくその事柄を考えてみるだけの落ち着きを養うべきです。
「むかむかと腹の立つとき顧みよ 理か非かまたは短慮なるかを」
これはなかなか難しいことのようですが、努力次第では誰にでもできることなのであります。
是非、この言葉を房子先生からの贈り物として、心にしまっておいてください。
在校生は、各自教室にて放送を聞きました。
午後は、中高生徒会3役が在校生を代表して青山霊園への墓参を行いました。
学園の活動の様子、見守っていてくださることへの感謝とこれからも日々の活動に邁進していくことをお伝えしました。