2024年度 中学校卒業式を行いました
学園便り
3月22日、中学校卒業式を行いました。
暖かな春の日差しが届く土曜日に、保護者の方にもご臨席いただき実施することができました。



たくさんの拍手に迎えられて入場した卒業生の氏名を、担任が一人ひとり心を込めて読み上げました。
代表生徒が卒業証書を受領したあと、皆勤賞や高嶺賞などの表彰も行われました。




続けて学校長から卒業生と保護者に向けてメッセージが贈られました。

温かな日差しに花々のつぼみが日ごとに膨らみ、春の訪れを告げています。
この佳き日に、保護者の皆様方にご臨席を賜り、山脇学園中学校卒業式を挙行できますことは、大きな喜びでございます。
卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。ただいまお名前を読み上げた287名のお一人おひとりのお顔を拝見し、3年前の入学式、ふっくらとした頬の緊張の面持ちでこの場にいらしたみなさんが、ここまでしっかりとご成長されたお姿を嬉しく思います。
みなさんが入学された年は、ようやくコロナ禍を乗り越え、学園の日常を取り戻し始めていた時でした。小学校時代を様々な制限下で過ごしてきた皆さんに、たくさんの活きた経験をしてほしい、そして友と学び合う機会をたくさん設けてあげたい、と考えていました。5月のオリエンテーション合宿ではとても楽しそうに取り組み、友達も増えて、何事も積極的に取り組む姿を見せてくれるようになりました。
ご一緒した道徳の授業では、キラキラした目で話を聴き、すべてを吸収しようとするかのようなみなさんの表情を思い出します。1カ月に一度あなた方にお会いするのが毎回楽しみでした。様々なタイトルでお話ししましたが、山脇房子先生が仰った「徳のある人」とはどんな人か、「なぜ学ぶのか」を基盤に、みなさんがこれから志を育むための土壌を耕せるように、自分にも他者にも幸せを創り出せる人になるように、という願いを込めて話しました。
一つひとつの話は覚えていないかもしれませんが、その後を見ていて、あの時伝えたかったメッセージはあなた方の中にちゃんと残っている、と感じています。授業を見に行けば、楽し気に学び合い活発に議論を交わし合う光景があり、校内で行われる様々なプログラムや体験学習などへ積極的に参加し、多彩な学びの世界を主体的に取りに行こうとする意欲を感じました。
この3年間でたくさんの出来事がみなさんのメモリに書き込まれたことと思います。楽しかった思い出だけではなく、失敗や後悔も全部、その経験から自分が何を学んだのかということを書き記しておいてほしいと思います。年を重ねる、というのはそのメモリから、自分が得た知恵を引き出して、よりよい行動がとれるようになることです。また来る経験への予測や準備が予めできるようになることです。中1より中2、中2より中3、みなさんは自分の感情をコントロールできるようになり、自分の意見を伝え、仲間との違いを認め合って協働し、物ごとを俯瞰して見て考えられるようになりました。そんな皆さんのご成長をまぶしく感じています。
中学3年の一年は、それぞれのクラスで探究活動に臨みました。広い学び分野から自分でテーマを立てて探究した「マイチャレンジクラス」、英語をツールとしてグローバルな視点で探究活動を行った「英語チャレンジクラス」、理系分野のサイエンスをテーマとして探究した「科学研究チャレンジクラス」。いずれも、自分のテーマを立てるというのは、なかなか難しいことだったのではないでしょうか。自分をよく見つめないと本当の興味関心に気づけないし、社会を見つめないと好奇心も課題も生まれない。ようやく立てた問いにアプローチの方法が見つからなかったり、既に同じテーマで誰かに研究されていることを知って、煮詰まったりしたこともあったことでしょう。
それらのプロセスの1年間を総括したのが、先日の山脇サイエンス・エキスポでした。印象的だったのは、みなさんのテーマの多様さと、それを発表する楽し気な表情です。一生懸命まとめたポスターを、自分に落とし込んだ言葉で、生き生きと伝えていました。2日間でプレゼンテーションをぐっと成長させたチームもあり、テーマに向き合ってきた思いを一人ひとりから感じました。中3生のフロアの熱気に、多くの中1生中2生が集まって目を輝かせていました。あの場所は紛れもなくみなさんの「志の宝箱」であったと思います。
発表はゴールではなく、ものごとの本質を見極めようとする探究の、より先の道へのスタートです。探究のスキルは、みなさんのこれからの全ての学びに対する視点やアプローチに影響を与えるでしょう。今回のテーマをさらに深めて追及し、真理を明らかにする「研究」の世界へ踏み込んでいく人も出てくるでしょう。この一年間の経験を、高校ではさらに進め、志の開拓にもつなげてください。
この学年の特別な力を強く感じたのは、合唱祭でした。
中2の時の歌声を聴いて、みなさんは高い感性と表現力を持っている、と感じました。それは豊かな非認知能力の芽吹きだと思いました。真剣に臨むことの価値を知っている生徒たちなのだ、それを集団として響き合わせることができる学年なのだと思いました。
その期待以上のものを、中3の合唱祭では如何なく見せてくれました。最高学年、最後の合唱祭として、準備の段階からこれまでの経験を生かす工夫が随所にみられました。初めての合唱祭を迎える中1生の実行委員と交流し、練習のアドバイスもしてくれました。
当日の合唱は、圧巻でした。堂々とした姿勢、凛とした表情、舞台に立った時から風格を感じさせ、
1クラス目が歌い出した瞬間から、大人びた歌声が会場を引き込み、魅了しました。
『旅路』『栄光の架橋』『手紙』『Reply』『さくら』『3月9日』『証』すべての曲のあなた方の実感を伴うことばが、メッセージが、表情をもって伝わり、胸を打ちました。中3の客席や舞台裏で、お互いの歌に感動して泣いている生徒たちもいました。先生方が目を潤ませ、私も気づけばほほを涙が伝っていました。みなさんが創り出したあの時間は、1年間過ごしてきたクラスの仲間と紡いできた時間そのものであり、3年間の集大成であったと思います。その姿と歌声は後輩たちに多くのものを置いて行ってくれたと思います。
この学年が持っている「声」があります。それは一人ひとりの伝えたい思いが集まった、つややかで美しく豊かな響きをもった声です。みんなの力を結集して人の心を動かすことができる、それがこの学年の強みです。あの一瞬にみんなで創り上げたハーモニーを、どうかいつまでも忘れず心に響かせ続けてほしい、と思います。
昨年度の創立120周年記念式典で、山脇房子先生の著書『黄金の釘を打て』を紹介しました。房子先生は、心に平和と人々の幸せの実現を抱き、考え行動する女性の育成を願っていらっしゃいました。私は黄金の釘とは、将来どんな場でも、どんな仕事に携わるとしても、自分の魂をかけた一打ちで多くの人に影響を与え、喜びと感動を創り出す人のことだと思います。この3年間でみなさんはそれぞれが人生の基盤となる自分の釘をつくってきました。ここからはそれを社会のどこにどう打ち込んでいきたいかを自分で考え、自分で磨いていく新たな研鑽の道です。隣りを一緒に歩いてきた先生たちは、これから少し後ろに下がり、皆さんの選択を見つめていきたいと思います。
学年の先生方から預かったメッセージを一言お伝えします。
「中学最後の学年をみんなと過ごせて、本当に幸せでした。ありがとう。
校外学習や山脇祭、体育祭などのイベントを通して、この1年間で本当に多くの成長を見ることができました。まだまだ素晴らしい才能や魅力が眠っていると感じています。これから先も一日一日を大切にしながら、自分の魅力を最大限に活かせる道を見つけ、笑顔で楽しく過ごしてください。」
最後に保護者のみなさま、お忙しい中、本日はご来校いただきまことにありがとうございます。お嬢様の中学ご卒業に際し、保護者の皆様とともに祝福できる喜びを感じております。
3年前、真新しく少し大きめのワンピース姿で入学されたお嬢様の姿を思い起こしていらっしゃることでしょう。今、同じ制服を着こなしていらっしゃるお嬢様は、心身共にほんとうに大きくご成長されました。
私ども教職員一同、大切なお嬢様をお預かりし、全力を尽くしてまいりました。それでも中学時代という思春期にあたり、お嬢様のご成長の日々にはご心配やご不安もおありだったことと思います。時には十分にご期待に沿えなかったこともあったかと存じます。しかし、今日の日を迎えることができましたのは、保護者のみなさまと手を携えてお嬢様を見守ってこられたからです。ご理解とご信頼のもと、温かなご支援を賜りましたことに、心より御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
それでは、287名の卒業生の乙女たちが、新たなステージで一人ひとりの志の旅を歩み続けられるよう願い、式辞と致します。
令和7年3月22日
山脇学園中学校校長 西川史子
卒業生による合唱「明日の空へ」が披露され、澄んだ歌声が講堂に響きわたりました。
式の最後には、合唱祭の全員合唱曲「アルデバラン」のピアノ演奏と拍手に送られながら卒業生が退場します。合唱や演奏を聴きながら、多くの教員が涙を拭っていました。


式後のHRでは、各担任より、一人ひとりに卒業証書が手渡されました。








終了後には、校庭や武家屋敷門は、友人や保護者の方、教員と記念撮影をする卒業生でにぎわい、思い出話に花を咲かせる明るい笑顔や声が溢れる空間となっていました。


武家屋敷門横の桜の蕾が色づき始めました。4月には、満開を迎えていることでしょう。
高校生となったみなさんとまたお会いできることを楽しみにしています。

