山脇学園中学校・高等学校 YAMAWAKI GAKUEN JUNIOR & SENIOR HIGH SCHOOL

山脇の“いま”を伝える学園ブログ

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2024年度 高等学校卒業式を行いました~その2~

学園便り

卒業式での学校長式辞をご紹介します。

式辞

草木が芽吹く季節、今日この佳き日に、ご来賓・保護者のみなさまにご臨席を賜り、山脇学園高等学校第77回卒業式を挙行できますことを大変嬉しく思います。

卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。

ただいまお名前を読み上げた256名のお一人おひとりのお顔を拝見し、美しく凛とした女性として成長されたお姿に、改めて胸が熱くなりました。

私たちは今、みなさんと過ごした日々を思い出しています。

中学に入学されたときは、少し恥ずかしがりの新入生でした。自己紹介で一番多かったのが「話しかけてください」だったそうです。そんなみなさんが、学年末のスピーチコンテストで自分の志について大勢の前でしっかりと話す力を身に付けていました。それぞれのこれからのチャレンジを楽しみにしていた3月、感染症拡大に震撼する日々が始まりました。

中学2年・3年の2年間は、制限の多い日々を過ごしました。行事は縮小したり形式を変えたりして可能な限り実施しましたが、行えなかった行事もありました。しかし、できないことを嘆くのではなく、今できることを考え、様々な約束事にもきちんと対応していました。何かあると友達を心配し、互いに気づかうみなさんのことを、先生たちは「本当に素直で優しい生徒たち」だとよく話していました。

2年ぶりで最後となった中3の合唱祭は、距離をとって練習し、講堂でのファーストテイクを録画して配信する形で行いました。マスクはしていましたが、中3としての気概を感じる歌声が心に響きました。

高校では、日常を取り戻した学園生活で、先輩たちが一生懸命つないでくれた山脇の伝統を引き継ぎ、後輩たちに残していくのだ、という意識を感じました。「謳歌爛漫」の山脇祭は企画委員が中心となり、自走自治のもと、クラスと部活の発表を両立させる形をさらに進化させてくれ、山脇祭の新たな伝統が刻まれた、と感じました。昨年度の学園創立120周年にあたっては、記念式典やホームカミングデーなどさまざまな企画を中心となって動かしてくれたのもみなさんでした。あの時植樹した武家屋敷門の桜を見るたびに、思い出しています。

高3の体育祭では、「全員全力」を合言葉に、全学年の笑顔と熱気にあふれる一日を創り上げてくれました。「ペルシャの市場&プロムナード」は校庭の静粛のなかに、みなさん一人ひとりの凛とした姿がとても美しく、「紬」のメッセージと共に、先生方や後輩たちへ静かに贈り物を置いていくかのように感じられました。

6年間で様々なステージに臨んできたみなさんが、最後は受験というステージに上がりました。孤独や辛さ、苦しさを感じた日々もあったと思いますが、目標に向かって、最後まで走りぬいたことを心から称えます。今のあなた方は、受験を経験する前よりもずっと、強い心、深い知性をたたえ、人の喜びも痛みも感じられる人になっています。

この6年間で真剣に取り組んだことは、すべて価値ある「点」として一人ひとりの中にいくつも刻まれています。それは紛れもなくあなただけの、唯一無二の軌跡です。時を経てそれらの点を自分の中の星として輝かせられるかどうかは、これからあなた自身に委ねられています。

令和元年からはじまったみなさんの山脇での生活は、コロナウィルスによるパンデミック、ウクライナやガザでの悲惨な戦争、そして能登半島地震など、現在も政治・経済・社会に大きな影響を与える出来事が多い6年間でした。

その時々に、ともに思いを馳せ、祈ったことを思い出します。自分たちにできることは何か考え、募金活動を主体的に行った姿も印象に残っています。これからも、思いもよらない災いに強く生き続ける人々を思い、自分たちの今ある幸せ、守られている環境に気づき、感謝できる人でいてほしいと思います。と同時に、これからは誰かを守れる強さも身につけていってほしいと願います。

山脇房子先生は、平和を願うまるく優しい心のなかに、志高く自らを常に磨き高め、社会で活躍する女性の育成を目指されました。その理念を胸に私たちは、みなさんが自分の志を携え、これからの未来社会で生き生きと活躍する姿を思い描き、日々一人ひとりと向き合ってきたつもりです。志開拓の旅路はこれからも続きます。一本道でなくてもいい、ジグザグでもいいのです。人生は選択の連続ですが、その時々に真摯に自分と向き合い、大切にすべきものを見据えていれば、自ずと道は拓けます。

「一流であれ」のことばを改めて贈ります。一流とは、有名でなくてもいい、どのような仕事に就いてもどのような場所であっても、自分だけの音を、魂を込めて奏でられる人、そしてその響きで他者に喜びと感動を創り出せる人のことだと私は思います。房子先生は「徳のある人には、努力次第で誰にでもなれるのです」ということばを私たちに遺されています。名もなき一流への研鑽の道を、これからも一緒に歩いていきましょう。

体育祭での人文字、そして昨日の会でのあなた方を見ながら思いました。一人ひとりが6年間で織りあげてきた「紬」は、学年全員の256本の色とりどりの糸と、先生方や先輩後輩などたくさんの出会いが縦糸横糸になっているのだと。楽しいことも苦しいことも一緒に染め上げてきた糸だからこそ、こんなに優しく、力強い輝きを放っているのだと。

寂しいけれど、私たちと一緒に紡いできた道はここまでです。明日からあなた方が、また新たに出会う多彩な糸で織りあげていくのを楽しみに、ここから見送ります。

制服は今日限りですが、胸に輝く校章はこれからもずっと心の中につけ続けてください。「しるしに恥じずもろともに 勤めはげみて世に立たん」。校歌の中で歌われる「もろともに」は、ここにいる仲間や先生方はもちろん、社会で活躍しているたくさんの先輩たちも含んでいます。社会に出たときに、山脇、という見えない糸がつながっていることに気づき、心強さを感じることがきっとあるでしょう。

母校はいつでもここに、そしてあなた方の中にあります。時に思い出し、時には訪れて、志の旅の続きを聴かせてください。

最後になりましたが、保護者の皆様にご挨拶を申し上げます。本日はご臨席いただきまことにありがとうございます。お嬢様のご卒業に、心よりお祝いとお喜びを申し上げます。

6年前、真新しく少し大きめのワンピース姿で入学されたお嬢様が、いま同じ制服を、こんなにも美しく着こなしている姿をご覧になり、さぞ感慨もひとしおのことと思います。私どもも今日という日を迎え、生徒たちと重ねた数えきれないほどの日々が思い出され、感無量の気持ちでございます。

教職員一同、大切なお嬢様をお預かりし、人生で最も心身の成長著しい時期に関わり、全力を尽くしてまいりました。しかし十分にご期待に沿えなかったこともあったと存じます。それでもこうして今日を迎えられましたのは、保護者の皆様の温かな支えと変わらぬご理解があったからこそです。どのような時も学園をご信頼いただき、毎日温かく送り出し見守ってくださいましたことに、心より感謝を申し上げます。

本当にありがとうございました。

それでは、山脇学園第77回卒業生の乙女たちの前途を祝し、みなさまに幸多かれと祈り、式辞といたします。

令和7年3月8日
山脇学園高等学校校長 西川史子