2023年度 1学期終業式を行いました

2023年7月27日

7月22日(土)、1学期終業式を行いました。

2023年度1学期終業式

終業式は、中学・高校それぞれ3学年が講堂に揃っての実施となりました。

1学期を終える生徒たちに、学校長より言葉が送られました。今回は中学校終業式での式辞を紹介します。

 

本日で1学期が終了します。このように中学3学年が一堂に会し、終業式が行えることを嬉しく思います。本当にようやく皆が対面で一緒にいろいろなことができるようになりました。今ある日常は決して当たり前ではありませんでした。私たちは多くの制限の中から、できる喜びを一つ一つかみしめながら、その時できることを懸命に行い山脇学園の日常を取り戻してきました。その日々を忘れることなく、改めて今の当たり前に感謝する気持ちを分かち合いたいと思います。この後歌う校歌も、皆が一緒に声を合わせられる喜びを感じましょう。 

さて、今日のテーマは「俯瞰力」です。英語では「Bird’s-eye view」。自分の中に鳥の目を持つ、ということで、今いる自分や世界を鳥のように上から見下ろす目のことです。「客観」が第三者の立場に立って見ることなのに対して、「俯瞰」は誰の立場にも立たず全体をフラットにとらえて見ること。なんのバイアスもかけずに全体像をつかむ視点なので「神の視点」と形容されることもあります。

「俯瞰」この言葉は昨年みなさんに「Well-being」の話をしたときに、自分にも周りにも幸せをもたらす「幸せ因子」の一つとして挙げた言葉でもあります。自分を高いところから見下ろす目を持つことができれば、悲観的な状況も違った視点が見え、凝り固まった自分を解き放つことができるとお話しました。

私は心配性で、ものごとを悪い方に考えたり、些細なことが気になったり、あとから後悔してクヨクヨするところがあります。以前様々な出来事が重なり悩んでいた時、尊敬するある方からこんな言葉をもらいました。「その負のエネルギーは、離別した方が良いです。心身ともに疲弊させるだけで何も生みだしません。そこに関わることで運まで奪われます。自分の魂を高い場所に維持することを考えたほうがいいです。」

迷路の中で彷徨っている気持ちでいましたが、その迷路にいること自体が自分のためにならないということに気づかされ、上からひょいと摘まみ上げられて明るくて見晴らしの良い場所に置いてもらったような気がした瞬間でした。

また先日参加したセミナーで、スポーツドクターの辻秀一さんからこんな言葉をいただきました。「自分のご機嫌は自分でとりなさい」「ご機嫌な状態が、最も高いパフォーマンスを引き出します」「不機嫌は自分の力をマイナスにし、さらにあなた一人の不機嫌が周りのパフォーマンスも落とします」

当たり前のことのようで、大きな気づきでした。本当にそうだ、その方が自分にも周りにも幸せをもたらすに決まっている。「ご機嫌の価値を手放さない」という言葉は自分の状態を俯瞰してみる大切さを実感し、習慣化するきっかけになりました。

皆さんも日ごろの中で、うまくいかないとき、思いが通じないとき、悩みに苦しむときがあると思います。そのような気持ちが自分の中で大きくなり心を塞ぎそうになった時に、この「俯瞰」「Bird’s-eye view」を思い出してほしいのです。敢えて一歩引いて距離を取り、高いところから見る視座をもてば、自分や出来事を振り返ることができ、問題の本質が見えることがあります。そして問題をどうしたら未然に防げたかに思いが向き、むやみに自分や人を責めることから解放されるようになります。

いま、ビジネス、スポーツ、そして勉強や受験、人間関係など、あらゆるシーンに「俯瞰力」ということばがクローズアップされているように思います。「仕事や勉強の効率をアップさせる」のも、スポーツや試合で「ゲームの全体を見る」のも、受験で「ゴールから自分の現状の力を逆算して勉強する」のもすべて「俯瞰力」です。最近活躍しているすごいなあと思う人に共通しているのは、インタビューなどで「重要なポイントを見落とさない振り返り」をさらりと述べたり、「今の自分やチームの課題の軌道修正」を淡々とやったりしていることですね。結果が悪かった時もきちんと感情のコントロール(アンガーマネジメント)をして冷静に受け答えし、そして次のチャンスにワクワク臨めるよう機嫌よく自分を整えて向かっていく。是非真似したいものですね。

1学期のご自身を俯瞰してみてください。新しい学年になって立てた目標や、なりたいと思っていた自分に近づけていますか。行事、校外学習、部活動や秋の行事の準備、皆さんが活躍するシーンがたくさんありました。クラスやチームの中で、どんな活躍や言動をしていた自分が見えますか。うまくいかなかったことがあったとしたら、何が原因で、その時自分はどう行動していたらよかったでしょうか。

学習面はどうでしたか。自分の学習態度を俯瞰してみてください。それが今日返される評価にどう反映しているのか。自分の目標に対して計画、時間の使い方、学習方法は的確だったか振り返り、次のリカバリをどうするかを分析してください。

私たちの言動は感情にコントロールされます。子どもは感情で行動しますが、成長とともに感情を制御することを覚え、思考を優先させて行動を選択できるようになります。しかし誰でも年齢を重ねればそうなるかといえばそうではないように思います。おとなになっても、感情が制御できない人や、自分の発する言動がどのように人に伝わるかに思いが至らない人もいます。また先ほどお話しした以前の私のように、自分の感情で自分自身を縛って迷路に迷い込む人もいます。いずれも自分も周りもあまり楽しくないし、よいパフォーマンスは創り出せないでしょう。みなさんには、是非「俯瞰力」を鍛え、自分の言動にフォーカスしコントロールできるように、今から練習していただきたいと思います。

今日意識していただきたいのは、もう少し高い場所からあなたたちの周りを見つめる「Bird’s-eye view」です。校庭の上に飛び立てば、赤坂という地の、オフィス街・飲食街・そして住宅街の真ん中に立つこの学び舎が見えると思います。90年近く前から、山脇学園は昔も今も変わらずこの場所で多くの方々からあたたかく支援され見守られてきました。オフィスに通勤する方々からはみなさんの楽し気な登下校風景が微笑ましい、列をつくりきちんと歩く姿が好ましいと言ってくださる方は多くいらっしゃいます。みなさんがマナーを心がけていることが伝わっていることは嬉しいことです。

一方で、今度は視点をフォーカスしてみてください。本校は最寄りの駅は複数ありますが、それらの電車や駅、通学路を俯瞰すれば、大勢の山脇生がどのように見えているかはすぐにお分かりになると思います。そこで迷惑にならない気持ちの良い行動とは何か、考えていただきたい。「私はちゃんとやっている、できている」という自分の視点だけではなく、集団としての行動の視点や天気など外的要因に対応する視点が必要になるということで、これはかなり高度な意識を必要とする行動です。

学校は小さな社会です。みなさんが当たり前に感じる安心安全な日々の生活は、先生方はもちろんお世話してくださる様々な方々・地域の方々など多くの方に見守られ支えられています。そのような存在に気づき、関わりを持つ多くの人たちが互いに気持ちよく過ごせるよう心を配ることや、そのために秩序を守ろうとする高い視点を持つ必要があります。

ルールを守らなければならないことは、みなさんは頭の中では理解しています。しかし社会の秩序を守る一員という視点を持ち続けるのはなかなか大変で、多くの皆さんは「悪気なく」誰かに残念な思いをさせたり迷惑を掛けてしまったりすることがあります。そのことに気づかなければなりません。また、あえてルールを破るという人は「私は秩序を守るよりも自分の意見や価値観が大事です」というメッセージを送っているようなものです。皆さんには自分を俯瞰して見て、自分の行動を誇れる人間性を示す言動に落とし込んでいただきたい。みなさんの徳のある行動が、後輩へのGIFTとなって贈られ、つながっていくことを心から願います。伝統とは、そういった意識やプライドのつながりのことを言うのだと私は思っています。

これからあなた方が生きていく未来で活躍するには、より広い「グローバル」という空でBird’s-eye view」を持つことが求められると思います。まずは自分、そして身近な社会を俯瞰できるようになることから始め、より高い視点で物事を眺め、地球規模の問題にもフォーカスできる力を磨いていっていただきたいと思います。

 

さて夏季休業の目標と計画はできていますか。

私からのおすすめは、スマホやiPadなどの画面から目を離し、リアルに触れる時間をもっていただくことです。生の音楽やアートに触れたり、自然の中に身を浸したり、一流の方の話を聴いたりする機会など、何でも構いません。ほんものにふれることがみなさんの脳や身体の細胞をリフレッシュさせ五感を活性化させます。日頃できないお手伝いなども是非買って出ましょう。あなたから周囲のご機嫌を創り出せることをどうか忘れずに。

 

最後に、本日創立120周年記念誌『黄金の釘を打て』を配布します。山脇学園の120年間の歩みを伝える貴重な資料や多くの方々の思いが綴られた一冊になっています。是非ゆっくりページをめくってみてください。心ばかりですが学園からの記念品もお渡ししますので、毎日使ってください。

ではお元気で!

 

終業式後には、大掃除やHR。HRでは一人ひとりに1学期の成績表が渡されました。

HRでは、120周年の記念品としてモバイルバッテリーが配布されました。

2023年度1学期終業式

この日は、山脇有尾類研究所理事長の篠崎尚史先生による高校生対象講演会や、中1~高1対象の計算コンテスト「かるこん」の表彰、動物慰霊碑の除幕式のほか、大学学校説明会や山脇Blue Earth塾など様々なイベントが行われました。

【篠崎先生講演会】

【「かるこん」表彰】

【動物慰霊碑除幕式】

夏期休業中には、夏季学校や夏期講習などが始まっています。

2023年度1学期終業式

暑さに負けず、楽しみながら「リアルに触れる」経験の中で五感を活性化させる時間やチャレンジする時間を過ごしてほしいと思います。