山脇学園高等学校卒業式 Vol.1

2020年3月24日

3月23日(月)、山脇学園高等学校第72回卒業式を行いました。

2019年度卒業式

 

【卒業証書授与】

2019年度卒業式

 

【学校長式辞】

2019年度卒業式

本日、山脇学園第72回卒業式を挙行するに当たり、山脇恭理事長先生のご臨席を賜り、まことにありがとうございます。

卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。学校を代表して心よりお祝いを申し述べます。

3月9日に行われるはずの卒業式が今日になってしまいました。それでも、式そのものができなかった学校もある事を想うと、まだ幸せかもしれません。

私たちは大きな歴史のうねりの中にいます。当事者である私たちは、今現在起きていること、起きつつあることを冷静に見る必要があります。山脇学園の歴史の中でも、戦争中は卒業式が例年通りには行われないことがありました。昭和20年、もうしばらくすれば戦争も終わるという時です。当時高等女学校と言われた本校は、5年制の学校でした。その4年生と5年生が当時の政府の命令によって、同時に卒業を強いられたのです。しかも、学校で式を行うことなどできず、勤労動員先の工場でひっそりと行われたのみでした。4年生の卒業は学生を早く卒業させて、労働力として使うという国策の中で行われたのでした。

翻って昨今の出来事を見ると、人類の歴史の中で、繰り返し襲ってきた感染症との戦いの一コマと言えます。近い所では、2002年から2004年にかけて流行したSARSや、2012年中東で蔓延したMERSが記憶に新しいものです。このMERSはヒトコブラクダが感染源で、人から人への感染も知られていて、実は今でも治療法、ワクチンが見つかっておらず、正確な意味では未だに収束していない病気です。これらも今回の感染症と同じコロナウイルスが病原体になっています。

こうした未知の感染症に接したとき、人間はさまざまな思いを持ち、かつ行動をするものです。SARSの時、2002年の10月に中国の広東省で最初の感染者がでましたが、中国政府は自国の名誉と信用を重んじるあまり、なかなか真相を公表しませんでした。その結果、世界中への拡散を招いたと非難されました。

感染症との戦いの歴史の中で、猖獗を極めたのはペストの時です。ペストは14世紀のころと、16世紀から17世紀にかけて、それから19世紀末の大流行が知られています。中国発の流行でしたが、今と同様、植民地主義の展開のもとでなされた交通体系の整備や商品流通の活性化、人間の移動の増加の中で蔓延したのでした。この後の流行で、インドでは1200万人以上の死者が出たと言われています。

ペストの例を挙げたのは、フランスの小説家、アルベール・カミュという人が、ヨーロッパで流行したときのことを、『ペスト』という小説に書いているからです。カミュという小説家は1970年代や80年代に、日本でもたくさん読まれました。私もその一人でしたが、現在の新型コロナウイルスの流行に会って、新潮文庫のこの本がベストセラーになっているそうです。その小説の中に「姿の見えない病気は、人の心をも病気にさせる」という一節があります。

すさんだ心のせいでしょうか、たとえば横浜中華街のいくつの商店に、中国人は出ていけという手紙が届いたり、クルーズ船の患者を受け入れた病院のすぐ近くにあるというだけで、「コロナ小学校」と、いわれなき中傷を受けたりした小学校があるとの報道がなされています。患者やその家族を差別するような言葉もあると言います。

最初に、今起きていること、起きつつあることを冷静に見る必要があると言いましたが、これらがそうした事例です。こうした態度に迎合してはいけません。

マスク不足の報道を知った中学生が、ネットで手作りマスクの作り方を調べて、たくさん作って配布したというニュースが配信されました。先ほどの「小学校」の生徒たちが、近くの病院で入院している人たちに、一言メッセージを書いて送りました。感激した患者さんが彼らの卒業式に小さな花束を贈ったそうです。

カミュの『ペスト』の最後は、この小説の語り手である、医師リウーの口を借りて、次のように言っています。この小説を書いたのは、

「感染した人に対する非道と暴虐のせめてもの思い出を残しておくために、そして、天災のさなかで教えられること、すなわち人間の中には軽蔑すべきものよりも賛美すべきものの方が多くあるということ」を知らしめるためであると。つまり、そうした人々に時には差別や偏見、暴力が振るわれたことを言っているのです。でもそれ以上に賛美すべきものがあったと。私たちも、そういう思い出を持ちたいものです。

新型コロナウイルス感染症の影響で、3月11日に行われるはずだった、東日本大災害の追悼式が行われませんでした。でも、福島の空には、大きな虹がかかったと言います。「天の配剤」と言えます。

ちょっと遅れた卒業式ですが、武家屋敷門の前の桜が、満開を迎えています。これも、皆さんの卒業を祝う「天の配剤」ということができるでしょう。

ご卒業おめでとうございます。

山脇学園中学校高等学校 校長 山﨑 元男

 

【式の様子】

2019年度卒業式

 

【在校生送辞】

―在校生総代―

肌を刺すような厳しい寒さも和らぎ、柔らかな春の息吹が感じられる季節となりました。

卒業生の皆様、ご卒業おめでとうございます。在校生一同、心よりお祝い申し上げます。

私たちにとって先輩方は、入学した当初から最も身近で憧れの存在でした。私たちに多くのことを教え、成長させてくださった先輩方には感謝の気持ちでいっぱいです。

部活動では技術面の指導だけではなく、気持ちを強く持つことや、礼儀を重んじることの大切さを長い時間をかけて、時には厳しく、丁寧に教えていただきました。先輩方のそのような姿を見て、私たちも後輩想いで周りに気を配ることができる最高学年になりたいという想いを強く持つようになりました。

また、山脇祭や体育祭などの行事でも率先してリードしてくださったおかげで、私たちも充実した時間を過ごすことができました。特に、今年度の体育祭では「ペルシャの市場にて・プロムナード」や「奏」の人文字を見て、その素晴らしさに感銘を受け、先輩方が多くの練習を積み重ねてきた様子が想像でき、このダンスにかける想いの強さが伝わってきました。中高を共に過ごした時間が長かったからこそ、何事にも前向きな姿は、とても印象に残っています。私たちも先輩方から学んだその努力する姿勢を今後の学園生活に活かせるよう、今まで以上に精進して参ります。

今、皆様は希望に溢れて各々の歩みを進めていらっしゃることと思います。しかし、その道の中では苦難に遭遇することもあるでしょう。そんな時には、六年間の学園生活で培った人間性と、同じ校舎で生活してきた友人の存在が、困難を乗り越える大きな力になってくれるはずです。山脇房子先生のおっしゃる「高い教養とマナーを身につけた女性」としての新たな社会での一層の飛躍をお祈りしています。

そして、今日この卒業式という場に保護者の方々をお招きできなかったこと、高校二年生全員で先輩方を見送ることができなかったこと、とても残念に思います。しかし、この場にいなくても私たち後輩が先輩方を想う気持ちは変わらないということを忘れないでいただきたいです。

最後に、皆様の今後のご健康とご活躍を心より願い、贈る言葉とさせていただきます。

 

【卒業生答辞】

第72回卒業生総代―

桜の花がほころび、吹く風にも春の気配が感じられる季節となりました。本日は厳しい状況の中、私たちのために卒業式を挙行していただいたことを、心より感謝申し上げます。

6年前の入学式の日の朝、3号館の教室に入り、座席表の中に自分の名前を見つけたとき、山脇生になったのだという実感が湧いてきました。入学当初は、移動教室の場所が分からず授業に遅刻したり、EIでの英語の授業に戸惑ったりと不安に思うこともありましたが、先生方をはじめ、多くの方々のご指導のお陰で今日という日を迎えることができました。

この6年間を改めて思い返すと、数えきれないほどの様々な思い出が心に蘇ってきます。中学生の時の合唱祭では、学年が上がるごとに一人ひとりが練習にも真剣に取り組むようになり、本番に向けてクラスが一つになっていくのを肌で感じました。全員が同じ目標に向かって努力し、本番で練習の成果を最大限発揮できたからこそ、結果に関係なく自然と笑顔があふれていたのだと思います。

また、高校の夏期学校や修学旅行では、留学生と交流し、自分とは違った価値観や文化に触れることができました。限られた時間と環境の中、グループで協力してプレゼンテーションの準備をし、何度も練習を重ねたことで、仲間との絆がさらに深まったと思います。そして、体育祭での「ペルシャの市場にて・プロムナード」で「奏」という人文字を描いたことは、掛け替えのない思い出となっています、この「奏」という文字には、「六年間紡ぎ奏でてきた絆は天に届くほど壮大なものである」という意味と、「一人ひとりの努力が功を奏するように」という願いが込められています。これから私たちはそれぞれ異なる道を歩むことになりますが、山脇学園で育んだ絆や思い出を胸に、さらなる高みを目指して精進していきたいと思います。

在校生の皆さん、今日私たちはこの長い歴史を持つ山脇学園を皆さんに託します。今はまだ卒業まで時間があり、ただ漫然と日々を過ごしてしまうこともあるかもしれませんが、周りに自分のことを応援してくれる友人や先生方、家族がいるという恵まれた環境に感謝することを忘れてはいけません。

6年前の入学式の日、今は亡き折原校長先生は「自分に正直に」という言葉を何度もおっしゃっていました。その時は、その言葉の意味をそれほど深くは考えませんでしたが、今考えると、自分の感情から逃げて、本当に大切なことを見失ってはならないという想いが込められていたのだと思います。これから先、大きな壁にぶつかることもあると思いますが、「自分に正直に、誠実に」生きていきたいと思います。

ここで改めて、今日までお世話になった先生方と在校生の皆さんに感謝申し上げます。そして、私たちのことをいつも近くで支えてくれた家族にも感謝の気持ちを伝えたいと思います。これから先、心配をかけてしまうこともあるかもしれませんが、温かく見守っていてくれると幸いです。

最後となりますが、今後の皆様のご健勝と山脇学園のますますの発展を祈念し、答辞とさせていただきます。

 

【校歌斉唱】

2019年度卒業式

 

【卒業生退場】

 

卒業生の終始凛とした姿に、胸打たれる卒業式でした。

私たちは第72回卒業生を誇りに思います。

ご卒業、おめでとうございます。

2019年度卒業式

2019年度卒業式