3月9日、山脇学園高等学校第68回卒業式を行いました。
山脇恭学校長より、卒業生一人ひとりに卒業証書が手渡されました。
<学校長式辞>
山脇学園が大切なお嬢様をお預かりして六年、教職員一同最善を尽くしてまいりましたのも、この日の為といっても過言ではございません。本日このように多くの皆様にご列席頂き、お蔭様で、第六十八期卒業生を盛大に送り出すことが出来ますことは、学園にとってこの上ない喜びでございます。学園を代表致しまして、厚く御礼を申し上げます。
山脇学園六十八期生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
こうして、立派に成長された皆さんを拝見していると、六年前の入学式で、折原修学校長先生を緊張して見上げていた、まだあどけない皆さんを思い出し、六年という時間の齎したものの大きさに、感慨無量です。
皆さんは、人間の脳細胞のネットワークが、一生のうちで最も盛んになるという、中学高校の六年間を、学習活動や部活動、体育祭や山脇祭、各種研究発表、コンテストなど数々の学校行事に参加することで、学力、体力、教養を深め、協調性を養って来られました。その間、喜びや楽しさや達成感を味わう一方で、不安、辛さ、無力感、また折原先生ご逝去のような深い悲しみも経験してこられました。しかしこれら全てが、皆さんの成長に大きな役割を果たす、貴重な経験であることを知って下さい。
昨年の山脇祭のスローガンは“Next Stage”という言葉でしたね。何があっても希望を捨てず、次のステージに進むのだという、頼もしいスローガンでした。そして、図らずも百年以上も前に、このスローガンどおりの人生を生きられたのが、皆さんの大先輩、本学園初代校長・山脇房子先生です。明治維新で武士階級が廃止されたため、房子先生のご実家は経済的困難に陥ったのですが、皆さんと、ほぼ同年だった房子先生は負けませんでした。病弱な母上に代わって弟妹の面倒をみながら小学校を終え、女子師範学校に入学。飛び級を重ねて、優秀な成績で卒業されました。それから単身、仙台の英国人宣教師の家に住み込んで、家事を手伝いながら英語を学び、18歳で上京。独学で上級英語をマスター。そして玄博士とご結婚後は、外国の要人と交流されましたが、その際、ご夫妻は日本人としての誇りを忘れない、尊敬すべき国際人であると、先進国の要人から評価されました。その一方で山脇学園の前身である女子實脩学校を開校、教育者としても大きな成果を残されました。まさに、目の前に次々と現れる壁を乗り越え、Next Stageへと進み続け、国際人としても、教育者としても、大成されたのです。
皆さんは、この房子先生の理念を受け継ぐ山脇学園の教育を六年間、ご両親やそのほか多くの方々の庇護の下で、何の心配もなく受けてこられましたが、今後も同様な庇護を受けられるとは限りません。その時には、これまでの幸せに感謝し、房子先生のように、次々に、Next Stageにチャレンジし続け、逞しく成長していってください。そうしていくうちに皆さんはいつか必ず、ご自分が真の大人になっている事を知るでしょう。
さて、最近ようやく、女性の社会進出が、徐々にですが、盛んになってきました。メディアも、女性を登用して業績を上げている企業を、いくつか取り上げています。ひとたび女性が甘えを捨て、客観的に判断する力を培い、その上で、女性の強みを活かして働けば、成果があがるのだと知れば、女性を管理職として登用すべく養成する企業も、どんどん増えてくるでしょう。
では、今申し上げた女性の強みとは何か。私のイメージは、それは、柔軟な心の芯にあって動かない、毅然たる強さなのです。まさにハートに包み込まれた富士の高嶺、我が校の校章そのものです。女性と男性が、其々の強みを活かして協力し合い、多くの問題を孕んだ今の日本、そして今の世界を、希望の持てるものにしていく事が、皆さんの世代に託された仕事だと思います。その為に、ご家庭、社会、国の内外を問わず、其々の居場所で、活き活きと働く皆さんの姿を拝見するのが、私の最大の楽しみです。
さて皆さんは、今日から山脇学園同窓会のお仲間に入られます。房子先生はじめ多くの先輩方がそうしてこられたように、どこにあっても、ご自分らしさを大切に、ご活躍ください。そんな皆さんを、母校は見守り、応援し続けて参ります。
最後になりましたが、保護者の皆様、本日はまことにおめでとうございます。今日迄大切に育ててこられたお嬢様の晴れ姿に、感慨も一入でいらっしゃる事と存じます。私たち教職員一同も、大切なお子様をお預かりして、全力を尽くして参りましたが、その間皆様には、本学園の教育方針及び教育活動に、深いご理解とご協力を頂き、多大なご支援を賜りました。ここに改めて、厚く御礼を申し上げます。どうかこれからも末永く、山脇学園を見守って下さいすよう。
卒業生の皆さんの将来が輝かしいものでありますように、お一人お一人が幸せでありますようにお祈りして、式辞といたします。
平成二十八年三月九日
山脇学園高等学校 校長 山脇 恭
- 答辞
- 在校生による感謝の歌