高等学校卒業式 ①

2015年3月10日

3月9日(月)、山脇学園高等学校第67回卒業式を、本校YAMAWAKIホールで挙行しました。

山脇恭学校長より、卒業生230名一人ひとりに卒業証書が授与されました。

<学校長式辞>
DSCN8452今年も、芽吹きの春、巣立ちの春が、巡ってまいりました。
山脇学園が大切なお嬢様をお預かりして六年、教職員一同最善を尽くしてまいりましたのもこの日の為といっても過言ではございません。本日このように多くの皆様がご列席下さったお蔭で、第六十七回卒業生をこのように盛大に送り出すことが出来ます事は、学園にとって最大の喜びなのでございます。学園を代表致しまして、厚く御礼を申し上げます。

卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。今日の皆さんと、六年前の入学式で壇上の折原学校長先生を見上げていた、幼い皆さんの姿とが重なり、時の経過の齎すものの大きさに、感慨も一入です。
皆さんは、長いようで短かった六年間を通して、学習活動や、クラブ活動、そして体育祭や山脇祭といった学校行事に真剣に取り組み、学力、知力、体力、精神力を伸ばしてこられました。一方で、その時々に味わった喜びや不安、楽しさや辛さ、達成感や無力感、そして、悲しみさえもが、皆さんの「心」を大きく育てたのも、また事実です。
私がそのことを強く感じたのは、昨年の体育祭での皆さんのパフォーマンスでした。
恒例の「ペルシャの市場にて」を踊り終えたあと、これも恒例の人文字に「修める」という文字を選びました。昨年七月に逝去された折原修先生への惜別、感謝、そして今後更に、様々な事を修めて成長していきますという約束。この三つを現すのにこれ以上ない一文字を選んで、折原先生に捧げた皆さんを、私は誇りに思います。

さて、昨年の山脇祭は「Be Colorful!」というスローガンのもとに開かれました。これは私たちが終生忘れてはならない、示唆に富んだスローガンでした。今日、皆さんの門出にあたって、そのことを、改めて振り返ってみます。
これはすなわち、人間はどんなに似た者同士でも、一人一人が微妙に違う色、つまり個性を持っている。だれもが「地球上にたった一つのかけがえのない存在」なのだという主張です。もし山脇で学園生活を共にしている仲間が、全部一色であったら、意見の相違がないので喧嘩も起こらない代わりに、向上するために欠かせない議論も起こらない。青と黄で緑が出来る事も知らない。想像も、創造も知らない。つまり山脇学園は変化も発展もしない、という注意であり、みんな違っているからこそ、自分の個性を大切にし、友達の個性を尊重し、其々の色を合わせて、別の素晴らしい色を作り出すことが出来るのだ、と指摘するメッセージです。そしてこれこそ、社会の一員である私たち全員が持っていなければならない基本的な認識なのです。
これから皆さんは新しい環境に入って行かれますが、きっと、山脇学園の仲間とはタイプの違う様々な個性と出会われることでしょう。そのときこそ山脇の「Be colorful!」精神で、お互い切磋琢磨しあって伸びていってください。

ところで本学園の初代校長山脇房子先生は、武士階級の豊かな家庭に育ちながら、明治維新による武士階級の廃止という、若き日の苦難を、気丈に克服して、家族の面倒を見ながら大成され、国際人として教育者として、素晴らしい仕事をされた方です。そのような、人への奉仕の心と強い意志とを合わせ持った方を母校の初代校長に持つ皆さんです。今日までは、ご両親やその他多くの方々の庇護のもとに幸せな日々を過ごしてこられました。しかしこれからは、そうばかりはいきません。大人になるにつれ、皆さんの前には厳しい壁が立ちはだかってくるでしょう。その時は、これまでの幸せに感謝し、試練を乗り越える事で大成された房子先生を思い、勇気を持って困難を乗り越え成長していってください。

従来、女性は管理職になれないというのが社会的通念でした。しかし今は、女性も管理職として働き、日本経済の発展に貢献するべき時代です。女性を積極的に管理職、役員に登用しようというのが一般的な考えになってきており、政府もそれを後押ししています。皆さんもこのチャンスを逃さず、女性だからという甘えを捨て、男性にはない、女性特有の強みを活かして、組織の活性化、業績向上に寄与していってください。しかしその女性特有の強みとは何でしょうか。
皆さんが六年間、毎日胸につけて登校された校章を見てください。毅然と立つ富士の高嶺を、丸みのあるハートが包んでいます。私にはこのデザインが、物事に動じない背骨を一本、体幹に通し、それを柔軟な心で包んで活躍する女性リーダーの姿にみえます。男女両性がそれぞれに特有の資質を活かして協力しあい、今の、多くの問題を孕んだ世界で、一目置かれるような仕事の出来る日本にしていく。私は、これがこれからの日本を背負っていく皆さんに託された仕事だと思っています。

さて今日から皆さんは、112年に亘って山脇の教育理念を繋いでこられた先輩方の、お仲間に入られます。どうか、房子先生はじめ多くの先輩方がそうであられたように、活躍の場が外国であれ国内であれ、家庭であれ社会であれ、日本人としての誇りを忘れず、勇気を持って夢を実現し、志を全うしてください。その皆さんを、母校が見守り応援し続けていることを忘れないで下さい。
最後になりましたが、今日までお嬢様方を大切に育ててこられた保護者の皆様、ご卒業本当におめでとうございます。立派に成長されたお子様の晴れ姿に感慨も一入でいらっしゃることと存じます。私たち教職員一同も、大事なお子様をお預かりして、全力を尽くしてまいりましたが、その間、皆様方には本学園の教育方針及び教育活動に、深いご理解とご協力、そして多大なご支援を賜りまして誠に有難うございました。ここに改めて厚く御礼を申し上げます。
お子様の母校山脇学園は、これからも良い教育機関であり続ける為に努力してまいります。今後とも末永く山脇学園を見守って下さいますよう、お願い申し上げます。お嬢様方のお幸せとご活躍をお祈りして式辞とさせていただきます。

平成二十七年三月九日
山脇学園高等学校 校長 山脇 恭

<卒業生答辞>
DSCN8476厳しい寒さも和らぎ、春の日差しが感じられる今日のこの佳き日に、私ども230名のためにこのような素晴らしい卒業式をおこなってくださいましたことを、心より感謝申し上げます。
旧校舎の講堂で入学式が行われてから、早いもので6年という月日が経ちました。新しい環境に慣れないことばかりで、入学当初は緊張と不安の日々でしたが、周りの方々の温かく時には厳しいご指導のおかげで、今日という日を迎えることができました。
改めて6年間の充実した学園生活を振り返ってみますと、数えきれないほどの様々な思い出が心に残っています。中1の道徳の授業では、社会で生きていくうえでの知識や、思いやりの心を教えていただきました。また、夏季学校、修学旅行に、合唱祭や学園祭など、数々の行事をここにいる仲間とともに切磋琢磨しながら過ごしてきました。私たちにとっては、その一つひとつがかけがえのない経験となりました。
特に印象に残っているのは、学園生活最後の体育祭で、「ペルシャの市場」を踊ったことと、「修」という人文字をつくったことです。「修」という字には人格を磨く、学問・技芸を身につけるなどの意味がありますが、折原修先生への感謝の気持ちも込めて、私たちはこの字を選びました。練習を重ねて、体育祭本番では堂々とつくり上げることができ、毎年体育祭を楽しみになさっていた折原先生もきっと喜んでくださったと思います。
在校生の皆さん、創立112年のこの歴史ある山脇学園を、今日皆さんに託します。新校舎の工事も進み、より良い環境の下で勉学に励み、素晴らしい学園生活を送れることと思いますが、残していかなければならない山脇学園の伝統を引き継ぎ、伝えていくことも忘れないでください。
私たちはこれから新しい場所でそれぞれの道を歩んでいきますが、山脇学園が母校であることには変わりありません。女性としての感性と豊かな知識を持ち、社会に貢献していくことが、6年間通った山脇学園への恩返しではないでしょうか。
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今日までお世話になった先生方、職員の方々、ご来賓の方々、在校生の皆さん、関わってくださったすべての方に改めて感謝申し上げます。そしてここにいる卒業生の皆さんと同じ時間を過ごせたことを誇りに思います。最後に私たちのことを支えてくれた家族に、感謝の気持ちを伝えたいと思います。この先も心配をかけてしまうかも知れませんが、温かい目で見守っていてください。

結びに、今後の皆様のご健勝と、山脇学園のさらなる繁栄をお祈り申し上げて、答辞とさせていただきます。