山脇学園高等学校卒業式 vol.1

2021年3月12日

3月9日(火)、山脇学園高等学校第73回卒業式を行いました。

2020卒業式
今年度の卒業式は、保護者の皆様には教室から見守っていただきました。

【卒業証書授与】

【学校長式辞】

本日、山脇学園第73回卒業式を挙行するに当たり、山脇恭学園長、畑口紘理事長をはじめご来賓の皆様やたくさんの保護者の方々のご来校を賜り、まことにありがとうございます。
卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。学校を代表して心よりお祝いを申し述べます。
ただいま230名の生徒一人ひとりの胸にどのような思いが去来しているでしょうか。人生の大きな節目の一つである今日のこの日の思いを大切にしていってください。
一方、それぞれのお子様をこれまで育ててこられた保護者の皆様、本日はまことにおめでとうございます。お子様たちの成長を、ともに喜びたいと思います。おめでとうございます。

何年か前に、人が生きるということを「物語を紡ぐ」と表現したことがありました。その言葉をもとにして山脇祭のテーマを「紡ぐ」の語にしたと聞きました。それは2018年の山脇祭です。とても嬉しく感じました。この言葉に関してもう一度言うと、 あなたが自分の物語を紡いでいるとき、ほかの人の物語が、あなたの物語の一部になったり、あなたの物語の基礎になったり、あなたの物語が展開していく背景になったりする、というものです。
これは『ゲド戦記」を書いたアーシュラ・ル=グウィンの新3部作の第1話『ギフト』に書かれている文章です。
あなたの物語は、隣にいる友達の、あるいは今は別の部屋にいるご両親の物語の一部になっているのです。自分だけの物語と思っているかもしれませんが、それぞれの物語は相互に絡み合い、影響しあいながら一つになっているだけで決して自分だけが登場人物ではないのです。
もう少し話を敷衍すると、あなたの物語と比べて、とても長いあなたのご両親の物語には、あなた自身がとても重要な一部になっているのです。そのことを忘れないでください。

「物語を紡ぐ」という言葉もそうですが、知るとすぐに深い思いに誘われる言葉があります。私の場合それは、ある本を読んでいて出会った「思い出せない記憶」という単語です。
これは、「時は流れ去るのではなく、積み重なるのだ」というフレーズに通底する思いです。
思い出されることのない記憶。もし私たちの人生の時の流れが、流れ去るのではなく、積み重なるのであるとすれば、私たちが記憶と呼ぶ過去の痕跡は、膨大な量になるでしょう。皆さんが山脇学園を卒業して、あの時誰々が、あるいは何々先生がこんなことをした、と様々なことをエピソードとして思い出すかも知れません。でもエピソードとして思い出せる記憶は、その痕跡の総体のうちのほんの一部に過ぎません。一つのエピソード記憶の周囲には、決して思い出されない、記憶と名付けることのできない体験の痕跡がまとわりついています。
「体験の痕跡」といいましたが、ある名付けようのない茫漠とした記憶の総体があなた方を、形成しているのです。もう少し広げて言えば、あなた方だけではなく、人の一生を形成しているのですが、12歳から18歳の、人生の中で最も重要な時期を過ごした山脇の6年間はあなた方にとって、記憶の痕跡の最も基盤となる人生の礎となるでしょう。またそのようになるように願っています。
この6年間の授業の総体は、授業だけではなく山脇で過ごした時間は膨大になっています。その膨大な時間の中の、卒業後に思い出されることのない時間の積み重なり、それこそがあなた方を形作ってきているのです。私も含め教師というのは、生徒達の中にエピソードとして想起できないような痕跡を育てることを天職としている人間です。
山脇での時間が、あなた方の人生の「思い出されない記憶」の土台となるものであれかしと、強く願っています。

ご卒業おめでとうございます。
山脇学園中学校高等学校 校長 山﨑元男

【式の様子】

【在校生送辞】

―在校生総代―
毎日見慣れた通学路の牛鳴坂、青山通り。門をくぐると美しい青空の下に広がる校庭。その校庭の桜の蕾は柔らかな日差しの中で今年もきれいな花を咲かせようと春の芽吹きの準備をしています。
本日、この佳き日に山脇学園高等学校卒業式を迎えられた卒業生の皆様、ご卒業おめでとうございます。在校生を代表し、心よりお祝い申し上げます。私達在校生は先輩方の旅立ちに、嬉しさと共に一抹の寂しさを感じずにはいられません。
先輩方は今、今日までの学園生活を様々な思いで振り返っていらっしゃることと思います。今までの学園生活を省みると、先輩方とともに過ごした時間はとても楽しく、また学びの多い大変有意義なものでありました。
今年度の体育祭では、例年とは違い、様々な学年で構成されたチームで競い合う形式で実施されました。練習できる時間がいつもより少なく、新しい試みでしたがどの競技でも、先輩方は常に強いリーダーシップで学年の異なる私達を導き、前向きで活気のある活動にして、協力する楽しさを教えて下さいました。また、体育祭の最後に先輩方が作り上げられた一文字の「結」を目にしたときは、「一人一人が糸となり、織り重なってできた絆と、この先の将来でそれぞれの努力が実を結ぶように」という先輩方の熱い思いを感じ、感動がこみ上げてきたことを覚えています。
さらに、私達が今年度の山脇祭を例年と違った新しい形で最後までやり遂げることができたのは、昨年度の文化祭で運営・部活などを通してより良いものを作ろうと工夫される先輩方の姿から学ぶことができたからだと思います。
先輩方の背中はいつも輝かしく、私たちにとって憧れの存在です。
これから先輩方は希望を胸にそれぞれの新たな道に進んでいかれます。先輩方は、山脇学園で仲間と切磋琢磨しながら、学び、それぞれの志を培ってこられました。新型コロナウイルス感染症の影響で大きく変化していく社会の中でも、先輩方はその志を基に、未来を切り拓き、どんな困難をも乗り越えて活躍されることを信じております。
私達在校生も先輩方の築かれた伝統を受け継ぎ、チャレンジ精神を持って悔いのない学校生活を送るために日々努力して参ります。
最後に、先輩方のご健康とより一層のご活躍を祈念して送辞と致します。

【卒業生答辞】

―第73回卒業生総代―
日差しが日に日にやわらかくなり、春の深まりを感じられる季節となりました。昨年に引き続き厳しい状況が続いていますが、本日は私達卒業生のために、このような素晴らしい式典を開いて下さり、
ありがとうございます。ご来賓の皆様、保護者の皆様にもこの場に足を運んで下さったことに心から感謝申し上げます。
私は中学一年生になって初めて第一制服に袖を通した時に、これから山脇生になるのだという実感が湧いたことを、今でも鮮明に覚えています。緊張の中、入学式で山脇学園の門をくぐったことがついこの間のようです。
中学校生活では勉強だけではなく、合唱祭や校外学習などの行事を通して、仲間と協調性を持って何かを創り上げることの大切さを学びました。
高校に進学してからは、貴重な体験をすることがさらに多くありました。特に印象に残っているのは、修学旅行での被爆者の方のお話です。ここでは、日本の歴史を生の声から知ることができました。
この経験は、私の考える戦争や平和の概念を変える大きなきっかけとなりました。
また、高校三年生で踊った「ペルシャの市場にて」も心に残る良い思い出です。今年はリモート授業が多く、先生方や友人と対面で授業ができる機会が少なかったこともあり、短い時間でダンスと人文字を完成させる必要がありました。雨の中傘をさして校庭で山脇の校章を描いたことも、強く覚えています。このような状況の中で本番を迎えることになりましたが、練習の成果を発揮して無事に「結」の人文字を描くことができました。六年間の集大成として「ペルシャの市場にて」を踊りきることができたのは、この学年全体の団結力があってのことだと思います。
そして、在校生の皆さんに伝えたいことあります。高校卒業式は自分にはまだ先のことだと感じている人が少なくはないと思います。しかし、周囲の友人との高校生活が終わりを迎えるのは本当にあっという間です。皆さんにはぜひ部活動や授業、日々の友人との何気ない会話など、日常的な学園生活を大切にしていただきたいです。
今後、私達は各々の進路に向かって歩みを進めてゆきます。その中で困難に直面したときも、常に他者を思いやることを忘れることなく、志を胸に努力し続けられる女性として精進してゆくつもりです。
また、この六年間で育んだ友情は私にとってかけがえのないものであり、それは、また私を成長させてくれるものでもあります。中高での思い出を糧として次の段階につなげていこうと思います。
あらためて、長い間私達を指導し、支えてくださった先生方や、職員の皆様、そして家族に感謝いたします。まだまだ未熟な私達ですが、これからもどうか温かく見守ってくださると幸いです。今後のこの厳しい状況が一刻も早く収まり、皆様のもとに平穏な日常が訪れることを願っております。
最後に、山脇学園のより一層のご発展と皆様のご健勝を心より祈念し、答辞とさせていただきます。

【校歌斉唱】

【卒業生退場】

大変な状況の中での最後の一年でしたが、自分と向き合い前向きに過ごした卒業生を私たちは誇りに思います。

ご卒業、おめでとうございます。